人間はものを見るときには両目で見ます。
メガネの度数を決めるための視力測定のときに、左眼を遮閉して右眼の視力や度数を測定し、次に右眼を遮閉して左眼を測り、それから両眼でも見てみて、両眼での矯正視力を調整して処方調製度数を決めるという方法をとる検者が多いのですが、
それですと、適切ではない度数が測定されてしまう場合があるのです。
なぜなら、両眼をあけてものを見ているときの右眼の状態(近視や乱視などの度数)と、左眼を遮閉して右眼だけでものを見た場合の右眼の度数とは、異なる場合があるからです。
右眼の度数を測るときに左眼にフタをする方法ですと、左右それぞれの眼の度数を個々に測っているのは、あくまでも片方の眼を遮閉している状態でしかなく、両眼で普通にものを見たときのそれぞれの眼の乱視の状態もわからないし、両眼の近視や遠視のバランスもわからないわけです。
たとえば、乱視の度数や軸角度についても、一眼を遮蔽したときと、両眼でものを見たときの一眼とでは、異なる値が検出されることもよくあるのです。
我々が眼鏡を使用するときに、もちろんですが両眼を開けてものを見ますので、そのメガネの度数を測る場合には、「日常的に両目でものを見たときの、左右別のそれぞれの眼の度数」を測るのが、自然で合理的な方法となり、快適なメガネの度数を得られることが多いのですが、そういう方法を「両眼開放屈折検査」と言い、そういう測定をするには、下記のうちのどれかの方法になります。
1)偏光板を使った特殊な装置(視力表)を使う方法
これは、この研究会の元代表であるアイトピアの岡本氏などが実施している方法です。
被検者にとって不自然な視覚とはならない、優れた方法ですが、これ用の特殊な装置が必要となります。
2)非測定側眼を適度にぼやかしてしまう方法
これには、ハンフリス法と、オクルージョン法があります。
ハンフリス法は、両眼開放を実施する店の中では、もっとも多くの検者によって実施されている方法ですが、人工的な不同視を作るので、被検者にある種の違和感を与えて、うまく実施できないことがあります。
オクルージョン法は、この会の元代表である岡本氏により発案され、この会員によりその有効性が確認された方法で、被測定側眼を、オクルージョンという緩いボカシ膜を加えて両眼の融像を保ちながら、各眼別に測定する方法です。
この研究会の会員は、このオクルージョン法により、両眼開放屈折検査をする人が多いのです。
なお、この両眼開放屈折検査の詳しい方法について、勉強したいかたにはこの会の元代表である岡本氏が著した本があります。
http://www.ggm.jp/labo/books.html
ここに紹介されている本のうち、『よくわかる眼鏡講座・下』『上手な眼鏡処方のノウハウ全公開』『眼鏡処方の実際手法』に、両眼開放屈折検査の具体的な解説がなされていますので、眼鏡技術者のかたで両眼開放屈折検査を勉強したいかたは、これらの本を読まれたらよいと思います。
あるお客様からのメール
2013.11.16
メガネのアイトピア 岡本隆博
下記に紹介しますメールは、当店でよくメガネをお作りいただくAさん(40代・男性)から、当店にいただいたメールです。
●私は、10才ごろから、初めて貴店を訪ねた40才まで、目の疲れる誤った度数のメガネ・コンタクトを掛けていたのですが、4年前に貴店のホームページにより、貴店では両眼開放屈折検査をしておられると知り、貴店へ行ってその検査によりメガネを作ってもらい、生まれて初めて快適に見えるメガネを使うことができるようになりました。
また、メガネのフィッティングにおいても、貴店で調整してもらったメガネはそれまでに私がかけていたメガネに比べますと
感覚的に鋭敏な私でも、掛け心地に問題がほとんどなく、もし、部分的に具合が悪いところ(少し痛いとか、ずれやすいとか)が出てきた場合でも、再調整をお願いすることによりたいていは解決します。
それで、なぜ私が、それまでわたしが気持考えて見ますと、まず、掛け心地の点では、フィッティングの上手なメガネ屋さんが、めったにおられないということ、それから、見え方の点では、大きな原因としては、以前に私が受けた目の測定検査は、
そのほとんどがオートレフに頼ったものだから・・・・
ということではないかと推察できます。(オートレフの検査は、両眼開放屈折検査にはなりません)
ところで、私の場合、いまでもたまにコンタクトを使いたいときがあります。
それで、私の目には乱視が有り、しかも乱視軸が左右でかなり異なるので、ぴったり合う眼鏡を作るのも難しいので、近視+老眼しか矯正できないコンタクトでメガネの見え方を求めるのは、絶対無理と分かりつつ、今日2件の眼科を梯子して、1日使い捨ての遠近両用のサンプルレンズを2種類貰ってきました。
1件目
姫路駅ビルのF眼科
オートレフにて
R S-5.00 C -0.50 AXIS 160前後、
L -3.50 C-2.00
AXIS 20
という結果で、お試し処方されたレンズが
R S-4.50 ADD +0.75、
L S-3.00 ADD
+0.75
装着した感想は「中間距離(1〜5m)しかはっきり見えない」で加入度数を上げるように、医師に言うも「あなたの年齢(44歳)だったら ADD+0.75で十分」の一点張り。
かなり頭にきましたが、おとなしくシード社の遠近両用レンズ2枚もらって引き揚げました。
2件目
加古川駅前のA眼科
オートレフにて
R S-3.25 C-1.00 AXIS 110前後、
L S -2.25 C-2.00
AXIS 20
という結果で、お試し処方されたレンズが
R S -4.00 ADD +1.50、
L S -3.00 ADD
+1.50
装着した感想は「シード社よりマシだが、中間距離ははっきり見えて遠近が弱い」。
クーパービジョン社のレンズで、加入度数が固定の為、レンズ13枚もらって帰りました。
以上の結果から言えることは、
「オートレフが如何にあてにならないか」
という事です。
それと、患者の不満を真摯に聞こうとしない眼科医の姿勢も非常に問題です。
多分、2件目の眼科医で休日装着用としてレンズを購入することになるのでしょうが、
今回の一件は、図らずも、貴店に処方して頂いた遠近両用のメガネの素晴らしさを証明することになりました。
もっと両眼開放屈折検査ができる眼鏡店、眼科が増えることを祈ります。
さらに申しますと、例え間違った度数のレンズでも、眼鏡やコンタクトの場合は取り換えが出来ます。
しかし、もしこれがレーシック等の手術だったと考えると非常に恐ろしい事です。取り返しがつきません。
●岡本
このAさんには、これまでに当店で、遠近両用のほかにも、遠中両用や中近両用やパソコン専用や遠方専用など、いろんなメガネをお作りさせていただいています。
Aさんが初めて当店へ来られたときの検査の値と、一番最近の検査の値を、両眼開放屈折検査による5m完全矯正値で示しますと、下記のとおりになります。
2009.3.1
R=(1.2×S-2.75
C-0.75 Ax95)
L=(1.2×S-1.75 C-0.50 Ax20)
2013.6.2
R=(1.2×S-3.50
C-1.00 Ax105)
L=(1.2×S-2.25 C-0.75
Ax25)
今回のオートレフの検査では、どちらの眼科のオートレフの値も、一部の近視や乱視の値が変に強く出ています。
検査のときに眼に不要な調節が介入する恐れが高まる片眼遮蔽屈折検査であり、しかも、それ自体では視力をチェックしない他覚検査……であるというオートレフの問題点が浮き彫りにされているように思えます。
仮にオートレフで得た度数を装用して視力をチェックして、仮に1.0〜2.0の視力がでたとしても、
それが近視過矯正になっていないという保証はまったくないわけです。
オートレフのそういう問題点を補えるのは、両眼開放による自覚的屈折検査……しかないわけです。